[移住者インタビュー]波佐見時間
自然の中で協力し合い季節を感じながら暮らす心を通わせた家族の在り方
青々とした棚田が並ぶ山間の道を登ると現れる、大きくどっしり構えた古民家。その庭先でヤギと遊ぶ子どもたちと、優しく見守る父と母。穏やかな家族の暮らしは、豊かな自然と地域との繋がりの中で育まれている。東京で暮らしていた河内拓馬さん・友紀乃さん夫婦が波佐見町に移住したのは3年前。子育てに適した環境で、家族の生活を見直したいという気持ちから移住先を探す中、地域おこし協力隊の募集がきっかけとなり決心した。
都会生活が当たり前だった夫婦は、地域の繋がりの強さに最初は戸惑ったそう。「しょっちゅう草刈りや行事に駆り出されて、とにかく人との距離が近い印象で。ただ皆さん親切に、一家での移住をあたたかく迎えてくれました」と振り返る拓馬さん。今ではすっかり溶け込み、狩猟免許まで取得。山に出没する猪を地域の方と捕まえて解体し、食肉への加工まで取り組んだ。友紀乃さんは自ら制作した服をオンラインやイベントで販売。波佐見焼で有名なものづくりの町という土地柄からか、周囲にも手仕事を得意とする人が多いそう。そして移住を通して、家族の関係性も変わったと話す。「以前は夫婦それぞれ忙しく働いて、個人プレーで生活している感覚でした。でも波佐見町に移住してからは、家族みんなで協力するチームプレーの中で生活しています。それに子どもたちも、自然の中で生き物に触れながら自由に遊ぶことで、以前より怖がらなくなりました」。
協力隊として空き家活用に取り組んできた拓馬さん。現在は古民家を自ら改修中で、来年春には農泊体験施設としてオープンする予定だ。「移住してから四季を身近に感じるようになりました。野菜売り場には旬の野菜が並んでいて、それをうまく取り入れながら暮らす日々が楽しくて。農泊でも、季節に寄り添った体験を提供していきたいですね」。地域で助け合い、自然の恵みを活かして暮らす。そんな家族の在り方が、懐かしくも新鮮に感じられた。