[移住者インタビュー]東彼杵時間
勇気ある一歩も新しい夢も、東彼杵の人々が応援してくれた。
東彼杵町
「hinata(ひなた)食堂」店主
斎藤 節子さん
埼玉県から東彼杵町へIターン
2025年の春に、東彼杵町で「hinata(ひなた)食堂」をオープンした斎藤節子さんは、元地域おこし協力隊。3人の子どもたちと共に埼玉県から移住しました。任期中は、家庭と両立しながら、地域との交流や取材を重ね、SNSなどを通じてその魅力を発信。多忙な毎日を送る原動力となったのは、子どもたちを含め、応援してくれる人々の存在でした。「東彼杵へ恩返しをしたい」と語る斎藤さんの、心温まる移住生活とは——。
新たな生活と、子どもたちのために
「きっかけは離婚だったんです」。不意に訪れた、斎藤さん家族の転機。
「ちょうど長男が高校受験を控えたタイミングでした。少しでも集中できるよう、都会すぎず、災害の少ない田舎への移住を考えていました」。
そこでインターネットで目にしたのが、東彼杵町の地域おこし協力隊を募集する記事。「初めて訪れたとき、故郷の群馬県と似た雰囲気に親しみを覚えました。さらに海もあって。高速道路や、鉄道も通っていて交通の便も良い。子どもたちに、第二のふるさとを作ってあげたかったので、もってこいの場所でした」。
その後さっそく空き家バンクを利用し、条件にあった家を見つけることに成功。内覧からスムーズに引っ越しを終えました。
たくさんのエールで駆け抜けた3年間
こうして始まった東彼杵での新生活。斎藤さんは、地域おこし協力隊としてまちの魅力を発信するなかで多くの人と出会いました。
なかでも、まちおこしを行う地元有志たちや先輩移住者たちは、生活や仕事のアドバイスに加え、さらなる人脈を広げてくれたそう。
また、日頃の挨拶や食材のおすそ分けなど、地域の方々とのふれあいもありました。「都会にはない人の温かさを感じました。私だけでなく、子どもたちも同じように感じてたみたいです」。
そして、斎藤さんの集大成となる地域おこし協力隊の活動報告会が行われた際には、町内外から100名近くが集い温かく見守りました。
「本当に嬉しかった。このまちに恩返しがしたいなと、心から思いました」。会の終盤で、斎藤さんは自分のお店をオープンすることを告げました。湧き上がる歓声のなか、瞳に嬉し涙をたたえながら。
「お母さん、すごいね」
地域おこし協力隊の任期を終えた斎藤さんの次なるステップは“お店を持つこと”でした。
「飲食を通じて、交流やクリエイトが生まれれば」と開かれた「hinata(ひなた)食堂」には、“日の当たるような温かい場所”になってほしいとの想いが込められています。
メニューは、家庭的な定食のランチや、特産の「そのぎ茶」を使用したドリンクに加え、「東彼杵ひとこともの公社」と九州電力が共同開発した「くじら焼き」も。くじら焼きの製造機は東彼杵を盛り上げてほしいという想いと共に製造機を譲り受けたそうです。
そんな多くの人たちに支えられながら開店準備に追われる母親の背中を見て、子どもたちは「お母さん、すごいね」と一言。斎藤さん家族にとっても大きく前進した3年間でした。
斎藤さんがよくゲストを案内するという、とある高台。移住したばかりの頃に家族みんなで訪れ、まちを一望したのだそう。いま、斎藤さんの目から見たその景色はきっと、さらなる輝きを放っているに違いありません。